脳梗塞cerebral infarction

脳梗塞とは?

脳梗塞とは?

脳梗塞(こうそく)とは、脳内の血管が詰まってしまったために脳細胞が栄養されず、壊死してしまった状態を指します。脳を形作る脳細胞は一度壊死してしまうと再生しないため、壊死を起こした部分が担っていた運動機能や感覚機能は失われてしまいます。

最近では脳梗塞の前兆となる症状が現れた時や、脳梗塞を起こしてから4.5時間以内であれば、血栓溶解療法を、24時間以内なら血栓回収術という治療を行って脳へのダメージを最小限に留めることが可能になりました。
しかし最も重要なのは、脳梗塞やその兆候が現れる前に危険に気づき、未然に防ぐことです。
まだ兆候が出ていない方は日頃の生活習慣を見直してみましょう。
もし不安な症状や心あたりがある場合は、早期に受診されることをおすすめします。

脳梗塞の分類

脳梗塞とは、脳内の血管が詰まることで様々な症状を引き起こす疾患で、

  • ラクナ梗塞
  • アテローム血栓性梗塞
  • 心原性塞栓症

の3つに分類されます。以下でそれぞれの違いについて説明していきます。

ラクナ梗塞

脳を栄養する動脈のうち、非常に細い動脈が詰まってしまうタイプの脳梗塞です。動脈硬化によって血管内が徐々に狭くなっていき、最終的に詰まってしまうことで脳細胞に壊死が生じます。
他の脳梗塞と同様に、手足の麻痺・感覚障害・ろれつが回らないなどの症状が起こりますが、ラクナ梗塞による壊死の範囲は15㎜未満と比較的狭いため、症状は軽いことが多いです。
また症状が起こらないこともありますが、微細な梗塞が多数発生することから突然悪化する場合もあり、注意が必要です。
脳梗塞の中で、1/3程度を占めます。

アテローム血栓性脳梗塞

脳や首の比較的太い血管が詰まってしまうタイプの脳梗塞で、プラークというコレステロールの塊が血管内を狭くし、閉塞させてしまうことで発症します。プラークの増減によって症状は良くなったり悪くなったりを繰り返しますが、最終的には閉塞します。また、ラクナ梗塞の場合と比べて太い血管が障害されるため症状が重くなることが多いです。
前駆症状として一時的に脳梗塞の症状が現れるため、異変に気づきやすい脳梗塞とも言えます。
脳梗塞の中で1/3を占めます。

心原性脳梗塞

心臓の疾患を原因として起こるタイプの脳梗塞です。
心房細動や心臓弁膜症・心筋梗塞などが起こり、心臓の機能が低下した場合に心臓内の血流がよどむことで血栓という血の塊ができ、脳に飛んで脳血管を詰まらせてしまう疾患です。心臓内でできた大きな血栓が首や脳の太い血管を詰まらせてしまうため、最も重篤な脳梗塞を引き起こします。

血栓が突然血管を詰まらせるために突如として発症することが特徴で、多くが意識障害を引き起こします。広い範囲が障害されることで、運動障害・感覚障害・言語障害(話せない・言葉が思いつかない)・視野障害(視野が狭くなる)・失行(道具の使い方がわからなくなる・歩き方がわからなくなる等)・失認(見たものが認識できない等)といった、様々な症状が発生します。
脳梗塞の中で1/3を占めます。

脳梗塞の前兆を示す症状

脳梗塞を発症する前には、前兆を示す症状が現れることがあります。
症状は数分から1時間以内に消えますが、それは一時的に脳血管が詰まった証拠です。
一度症状が現れた場合は数日以内に脳梗塞を発症するリスクが高いため、症状に気づいたらすぐに受診してください。

運動の障害

持っていたものを突然落とす、字が上手く書けない、足が上がらない、身体の左右どちらかに力が入らないなど。

感覚の障害

触った感覚がない、温度を感じない、片方の手が痺れるなど。

言語の障害

ろれつが回らず上手く話せない、言葉が出てこない、言葉を理解できないなど。

視覚の障害

視野が狭くなる、ものがブレて見えるなど。

めまい

激しいめまいが起こる、ふらついて歩けなくなるなど。

脳梗塞の原因・リスク

脳梗塞の主な原因は動脈硬化です。
動脈硬化を引き起こす要因には、加齢や高血圧・肥満・喫煙・飲酒・糖尿病があり、多くが生活習慣に由来します。
心臓病も脳梗塞の原因となりますが、その背景にも動脈硬化が関わっています。

生活習慣

乱れた食習慣・運動不足による高血圧や肥満は、動脈硬化を引き起こし脳梗塞のリスクを高めます。
また生活習慣病である糖尿病は全身の血管をボロボロにしてしまうため、同じく動脈硬化となって脳梗塞を引き起こします。

心臓病

高血圧・動脈硬化の状態が続いて心臓に負担がかかると心臓病を発症します。
心臓の動きが悪くなり血流がよどんでしまうため、心臓の内部で血栓ができやすくなります。
心臓内でできた大きな血栓が脳の血管を詰まらせてしまうと、重度の脳梗塞を引き起こします。

脳梗塞・前兆症状の治療

内科的治療(薬物療法)

薬物療法では、主に抗血小板薬や抗凝固薬などを使用します。高血圧や肥満・糖尿病などの生活習慣病がある場合は、それぞれの疾患に対する治療も併用します。

抗血小板薬

血小板とは、傷ついた血管の内側に付着して傷を防ぐ役割を持つ血球です。動脈硬化が起こって傷ついた血管には血小板が集まりやすくなっていますが、血管に沈着しているコレステロールとともに固まることで、プラークと呼ばれる塊を作ってしまいます。
このプラークの一部が剥がれて血管を詰まらせてしまうため、抗血小板薬によって血小板が集まらないようにします。

抗凝固薬

心臓の病気などで血液の流れが悪くなると血液が固まりやすくなってしまい、血栓ができやすくなります。そこで血液が固まることを阻害するために使用するのが抗凝固薬です。

降圧薬

高血圧の治療に使用される薬で、血管への負担を減らせるため動脈硬化の抑制に効果があります。動脈硬化の進行を抑えるため、脳卒中の再発予防にも有効です。

スタチン系薬剤

脂質異常症(高脂血症)の治療に使用される薬で、肝臓でコレステロールが作られるのを抑える作用があります。脳梗塞のリスクとなっている悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を減らすことができるお薬です。

外科的治療(手術療法)

血管吻合術(バイパス術)

血管の詰まってしまった部分の先に、別の部位から持ってきた血管を繋げることで、詰まった部分を迂回する新たなルートを作る手術です。血液が流れなくなった部分へ、別ルートを通じて血液を送り込みます。

頚動脈内膜剥離術

頚部にある内頚動脈という太い血管が狭くなっている場合に、血管の内膜をくり抜くことで血管内を拡げる手術です。内頚動脈にプラークが沈着して血管内が狭くなっていると、血栓が流れてきた際に詰まってしまうリスクが高くなります。そのため予防的に狭くなった血管の内側をくり抜いて内部を広くする手術が頚動脈内膜剥離術です。

頚動脈ステント留置術

内頚動脈の狭くなっている部分にステントと呼ばれる金属製の網のような筒を入れることで、血管内を拡げる手術です。

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